鍵を渡されて始まり

六番目の小夜子 (新潮文庫)

ここ1ヶ月程、恩田陸作品を次々と読み漁っている。
きっかけは義弟が結婚し、その際に処分予定の文庫本の中から、恩田陸作品だけでもと譲って貰ったこと。

私は恩田陸作品のファーストコンタクトは、小学校に入るか入らないかくらいの時だと思う。
某国営TVで夕方くらいに「六番目の小夜子」を見たのがそれだ。
この枠では色々と子供向けミステリーの連続ドラマをやっていたと思うが、題名をずっと覚えていたのは小夜子だけだった。
栗山千明さんの綺麗な髪、見慣れない制服、洋風のミステリアスなお屋敷、暗い画面、エーデルワイスを歌う人々、あの音楽
それらが小さいながらにずっと頭から離れなかった。

そのあと遭遇したのがいつだかは覚えていない。中学生のような気もするが高校生のような気もする。
「本の」六番目の小夜子と出会った時、衝撃を受けたのは覚えている。
小さな頃の、あのなんとも言えず胸に込み上げる懐かしさと興奮、弾んだ気分、そして困惑。
司書の先生と
「この『六番目のサヨコ』って昔、ドラマやってましたよね?栗山千明さんが出てて…」「そういえばやってたわねぇ。」「これ借ります。」
って会話をした記憶はある。
その後は先生に進められるままに「図書館の海」に手を出した。
夜のピクニック」「ドミノ」「いのちのパレード」「中庭の出来事」「ライオンハート」と、とりあえず高校生の時に図書室にあった(入れて貰った)恩田陸作品を読んでいく中で、私は常野物語に出会った。

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)

それはハードカバー版でひっそりと本棚にしまわれていた。
図書室に入ってる文庫の作品は少なかったし、新しく入る作品は先生に取り置きして貰っていたので、気づいたのが遅かったのだ。
初め「蒲公英草子」を手に取り、シリーズ物だと気づいて他のを探した。「光の帝国」「エンドゲーム」もちゃんと揃っていてほっとした。
このシリーズは何度も繰り返し読んだ。とりあえず借りて読んでたし、借りなくても図書室で読んでた。

街灯の無い、暗い夜の山間を、一人仄かに明るい光を纏いながら飛んでくる赤ちゃん、バスに乗るなと言う必死な女性、頭の中に沢山の文字や映像や音声や感情などが一度に洪水となって押し寄せてくる様、それらが幾度と無く頭の中で映像として残っていた。

不思議で魅力的な世界が、あちこちにそこかしこにあった。
こうして私は彼女の世界に足を…というより身体ごとダイブしたのだった。

(そのうち別記事で続き書きます)